逆さY女

 

・夕過ぎて窓下賑わす虫の声

駒澤大学へ行った帰り、
喫茶店で俳優の日色ともゑさんを見たことは
きのうここに書きましたが、
もうひとつ
忘れてならないことがありました。
それは、
田園都市線駒沢駅構内でのこと。
階段を下り
地下通路を歩いていると、
イシバシが、
「ほら、ほら…」と前方を注視しています。
見れば、
スーツ姿の颯爽とした女性が、
大きく脚をひらき、
そうですね、
かかととかかとの間が
少なくとも
四十センチはあったでしょう。
膝をピンと伸ばし。
あごを気持ち前に出し、
携帯電話をかけているところでした。
なぜ脚をひらく必要があるのでしょうか?
彼女の横を通り越し、
二十メートルほど進んだとき、
阿吽の呼吸でイシバシと振り向くや、
離れていますから
姿は小さくなっていましたが、
かえって形くっきりと、
彼女は「Y」の字を逆さにした姿で立っていました。

図書新聞に、
寅さん本の書評が掲載されました。
コチラです。

・秋なれば空深くより音来る  野衾