田植え

 

・蝉しぐれ大音量のいのちなり

営業の責任者でもある専務イシバシが、
都内にある某マンモス大学へ赴き、
春風新聞を配ってきました。
勤務する先生の数が多く、
一日で配れず、
暑いなか二日にわたって配ってきたと、
夕刻、
汗を拭き拭き帰ってきました。
いまはまだ夏休み、
大学へ行っても実際に会える機会は少なく、
その場合は、
腰を曲げ、
研究室のドアの下に
春風新聞を差し込みます。
差し込み終えたら、
腰を伸ばして次の部屋へ。
この繰り返し。
二日間で約五百回の腰の曲げ伸ばし。
専務イシバシ、
子どもの頃から仕事の虫、
家の仕事もよく手伝い、
田植えもしたから
体がそのことを忘れていない。
五百回の腰の曲げ伸ばしをしているうちに、
ああこれは、
田植えの動作に似ている
と悟ったのだとか。
なるほど。
動作だけでなく、
その一通の春風新聞が、
仕事のきっかけをつくるのだから、
意味からいっても田植えに似ています。

・虫の声何の虫ぞや答え無し  野衾