栗の木の下

 

・ふるさとの立ちて朝霧靡きけり

十三日の墓参り当日、
集まった親戚ともども午後三時出発。
天気予報は雨を告げていましたが、
そんなに時間をかけるわけでもなし、
まあ持つだろうと
高をくくって出かけたところ、
墓前に線香をあげ静かに煙が燻り始めた頃、
一転にわかに掻き曇り、
ばらばらばらと降ってきました。
墓地のこととて逃げるに逃げられず。
すぐ横の、
割と大きな二本の栗の木の下にもぐりこみ、
しばらく待機。
そうしていると、
いつの間にやら父も母も、
叔父も叔母も弟も、
だんだんだんだん小さくなっていくようで。
さしずめメルモ、
いやメル子、メル太郎。
となれば、
♪大きな栗の木の下で…。
と、
それでも枝葉の間を縫って雨粒は落ちてきます。
やがて小降りになり。
いつまで待っても仕方ありませんから、
メル子メル太郎をはや返上、
しわの数を増やして
木を離れ。
順にお参りを済ませての帰り道、
大きな杉の木の下は、
まったく雨に濡れておらず、
一同瞠目。
雨に降られたときは、
栗の木よりも
杉の木だと、
メル子メル太郎に逆戻り。

・稲妻や臥所の朝を照らしをり  野衾