ビッグイシューおじさん

 

・蕎麦屋にて薄き夏服前にあり

「ホームレスのひとが売る雑誌」
として華々しく登場したビッグイシューですが、
一時に比べ、
このごろあまり見なくなりました。
が、
JR桜木町駅南改札をでて野毛方面へ向かうあたり、
この暑さにもめげず、
連日、
ビッグイシューを売っているおじさんがいます。
おじさんといっても、
おそらくわたしより若いでしょう。
キャップを斜めに被り、
模造紙にマジックで手書きした宣伝文句をちりばめ、
身振り手振りを交え奮闘しています。
そのトークが実に愉快、
くされ政治屋どもの
くされ演説を聴くよりも
ずっと面白く、
いっとき暑さを忘れます。
たとえば。
「………買ってちょうだいこの雑誌。
そんなに悪い雑誌ではないとわたくし思います。……」
うーん。すごい!
ふつうなら
「ほかでは読めない記事満載の雑誌です」
とかなんとか言うところ、
「そんなに悪い雑誌ではないとわたくし思います」
だもの。
この「わたくし」が痺れる。
以前、
「ほかでは読めない記事満載の雑誌です」
的なことも確か
おじさん言っていたように記憶します。
しかし、
そんなふつうの言葉では
買ってもらえないと悟ったとでもいうのか、
いつから使い始めたのか
定かではありませんが、
「そんなに悪い雑誌ではないとわたくし思います」
おじさんに著作権料を払って
使わせてもらおうかな。
「『おうすいポケット 新井奥邃語録抄』
そんなに悪い本ではないとわたくし思います」

弊社は、
明日(12日)から16日まで夏期休業とさせていただきます。
よろしくお願いいたします。

・雲が行く低きところの残暑かな  野衾