ツリーハウス

 

・山小屋の歌に飛び入り雹が降る

まだ小学校に上がる前、
よく遊んでもらった近所の久男くん
(ぼくより四つか五つ上)が、
木の上に隠れ家を作った。
秋田だから杉だったろうか?
檜?
欅?
柿の木は折れやすいから、
柿の木ではなかっただろう。
はるか遠くの記憶で、
夢のようでもあるけれど、
足元から覗く地面の揺れと空の青さは忘れられない。
のだが、
空についての印象は、
その後に聴いた、
中島みゆきの
「この空を飛べたら」
の歌によって醸された空想かもしれない。
むかしむかしに、
ひとは鳥だったかもしれないと
歌は語りかけてくる。
ちなみにわたしは酉年です。
さてそういう基本の夢を叶えたひとがいる。
詩人の佐々木幹郎さん。
幹郎さんは子どもだなぁ。
いいなぁ。
本気なんだもん。
群馬県嬬恋村にそれはあった。
木の上にしっかりと設えられた板の間に立つや、
五十年前の記憶は
けして夢でなく、
久男くんと遊んだあの日も
あの日も、
手が届かないだけで、
ほんのすぐ近くにあるような気がしてくる。
風の音まで違って聞こえる。
木の上は不思議。
一晩近くの宿に泊まり、
翌朝、
ふたたび木に登った。
五十年は早い。
百年はもっとかもしれない。

・雷も嬬を恋ふるや宿を割る  野衾