ニンニク爺

 

・この川は俺の川だと青大将

仕事の帰り、
本町小学校の横を歩いていたときのこと、
赤銅色の顔をテカテカさせながら、
ニッカボッカを穿いた
頑健そうな老人とすれちがう。
瞬間、
強烈なニンニクの臭いが
ぷわわ~~ん!!
ぷわわ~~ん!!
もうひとつ。
ぷわわ~~ん!!
ニンニクそのものの臭いなら
まだ許せる。
ニッカボッカを穿いた頑健そうな老人は、
仕事を終え、
おそらくビールか焼酎か菊水ふなぐちでも飲みながら
大量のニンニクを食ったのだろう、
アルコールとニンニクと老人の肉体が有機的に化合され、
えもいわれぬ、
この世のものとも思われない
悪臭を発生させた、
ものと思われる。
わたしはもともと匂い臭いに敏感なのだ。
あまりの悪臭に、
わたくし、
しばしその場にうずくまる。
うっうっうっ、
と、
うずくまりながら顔を上げると、
ニンニク爺は
何事もなかったかのごとく
(ニンニク爺にしてみれば、何事もなかったわけだが…)
振り向きもせず、
階段をゆっくり上っていった。

橋本照嵩『石巻かほく』紙上写真展
の十六回目が掲載されました。
コチラです。

・出勤時蛇と戯れ遅刻せり  野衾