三択

 春の雨泰山青く霞みけり
 木曜日は気功の日で、昨日がその日。7時から始まるので、木曜日はいつも横浜駅の地下にある回転寿司屋でいくつか寿司を摘まみ、腹ごしらえをしてから会場に向かう。
 このごろは、店員さんたちが顔を覚えてくれて、マニュアル以外の言葉をかけてくれたりする。椅子に座って、いつものように好物のカニ汁を頼んだ。わたしは、海老よりも断然カニ派だ。ほかにアラ汁、青ノリ汁もある。青ノリ汁は磯の香りが利いて、食欲がほどよく刺激される。アラ汁はまだ頼んだことがない。
 わたしが5皿ほど平らげた頃、となりに下くちびるが異様に飛び出た(腫れ上がったと形容したいぐらいの)おばさんが来た。若い男の店員が、傘はこちらに、荷物はテーブルの下に置いてください。後ろの棚にも置けます、と、マニュアルどおりのことをおばさんに伝えた。「あ、そうなの。じゃ、こちらに置かしてもらうわ。ちょ、ちょ、ちょっと。ちょっと。味噌汁は美味しいのある?」。店員、「……」。「美味しい味噌汁ある?」。「アラ汁、カニ汁、青ノリ汁の3種類ございまして、お好みにより…」。「どれが一番美味しいの?」と、くちびる、なかなかしつこい。店員、マニュアルどおりが通じないと判断したのか、「アラ汁が先に無くなってしまいますから、アラ汁が美味しいかも分かりません」。すると、くちびる、「そうなの。じゃ、わたしはカニ汁をいただくわ」。いただくわって、あーた…。くちびる、なかなかやる。おいら、思わず茶をこぼしてしまった。

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