恒例

 正月2日は、親戚一同が我が家に集まり、おせち料理を食べながらカラオケに興じるのが最近の習いとなっている。
 腰の痛い母を助け、わたしが蟹玉と回鍋肉と海老餃子をつくった。田舎のこととて、普段食べなれないらしく、皆、喜んでくれた。男鹿の叔父は例によってブリカマをどっさり煮付けてきてくれた。叔父は数年ごとにいろいろなものに懲る性格で、ある時は習字、ある時は盆栽、ある時は果実酒、そして今はカラオケとブリカマだ。
 カラオケは今流行りのマイクに、歌の入った薄いチップを挿入する式のもので、叔父はわたしが帰る前になると必ず電話をしてきて、この頃歌っている歌は何かと訊いてくる。1曲2曲はだめで、5曲ほど所望されるから結構苦しい。そんなに新しい歌ばかり覚えていられない。仕方がないから、古い歌でまだ皆の前で披露していない歌のタイトルを告げる。叔父はこちらが希望した歌をメモし、業者に新しいチップを頼むらしいのだ。叔父は、収録曲のリストを綴った自前のカラオケ本まで用意して持ってくる。表紙まで付けて! 几帳面な叔父の面目躍如。
 身内のことを褒めるのはどうかとも思うが、とにかく皆歌が上手い。五城目の叔父は、いつもは少々酔っ払いすぎて本来の上手さが出ないのだが、今回の「山のけむり」は格別。春五月、祖母が山菜を採りに入って行く山々が目に浮かぶほど出色の出来だった。
 歌手になりたくて東京に出たことがあったという話を何度か叔父から聞いたことがある。父からも同じ話を聞いたから、本当なのだろう。
 わたしもカラオケが好きで、相当カネも注ぎ込んでいるが、弟にはどうしても敵わない。弟はいつも自信たっぷりに歌う。