グループ全体のパーティーがあり、わたしは少々遅れて会場に到着した。式はすでに始まっていて、乱雑に脱ぎ捨てられた靴を除けながら、わたしは部屋の後ろに行き、社長を始め、お歴々の挨拶を聞くともなくぼんやり聞いていた。
 眠くなるような第一部がようやく終わり、会場をホールに移し、いよいよパーティーということになった。
 第一部の部屋からどっと人がいなくなり、頃合を見計らって、わたしも上の会場に行こうとした。ところが、いくら探しても、わたしの靴がない。似た靴はあっても、わたしのものではない。あとに居残った人たちがいっしょに探してくれたけれども、やはり、どこにもない。あるのは惨めで、みすぼらしい、革のなれの果ての靴どもだった。
 仕方なく、裸足でホールに向った。どうしたの。靴がないんだ…。
 パーティーは前半が終了し、休憩時間に入るようだった。社長と専務が近づいてきて、近頃の若者の勤務態度がどうのと言い、意見をもとめる風であった。傾いだこころと体を無理に伸ばして、わたしは自分の意見を言った。あら、それは前にあなたが言ったことと違うんじゃないかしら、と専務は腕の包帯をさするような仕草をしながら言った。いつ怪我をしたのだろう。社長は、専務の腕をかばうような目でじっと見た。
 なんだかつまらなくなって、わたしは二人にお辞儀をし、宙ぶらりんのまま身を持て余した。
 ありましたよ、ほら。いとこのM君だった。笑顔で差し出された手に握られていたのは、まぎれもなく、わたしの靴だった。どこで見つけたの? M君は、いいからいいからと言って、わたしが靴を受け取ると、会場のどこかへ消えてしまった。
 どういうわけだか、涙がにじんできた。それと、どの人にもなにか十分に接してこなかった気がして、そのことが、なんだかとても悔やまれるようだった。涙は、そのこととも関係があるようで、ぐじゃぐじゃになった。
 やがて休憩時間が終わり、パーティーは最後のプログラムへ移ったが、あとのことは覚えていない。

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