静黙

 夜半(よわ)過ぎて耳は外向く猫の恋
 新井奥邃(あらい・おうすい)の言葉に「静黙」がある。奥邃が舎生と共に暮らした謙和舎は静黙が支配した。
 △夫れ静の真は神の心に在り。故に人能く神に近づけば其心静なり。若し神に遠かれば其心静ならず。其心能く静にして而る後人能く神の心に楽む。
 △是れ言ふべからざるの楽なり。若し其れ語ることあれば、必ず黙を以て語る。真楽の言は誠に静黙の中に動く。神の心の静息なり。覚知以上の覚知に属す。我以上の我に在り。常に小童の愛を以て神の御旨を得。
(「投火艸 七」『新井奥邃著作集』第5巻176頁)
 真楽の言は誠に静黙の中に動く。恩師でもある演出家の竹内敏晴さんが作った絵本が一つだけあるそうだ。最近そのことを、ある雑誌で知った。作・竹内敏晴、絵・長谷川集平。
 竹内さんがたった一つこだわったことがあるという。それは、言葉のないページをつくること。
 ネットで調べたら、もう絶版になっているらしく在庫がないとのこと。中古市場で手に入れた。言葉は、言葉のないページからかもし出される。
 まるまると黙して居りぬ寒雀

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