かげひびき

 威厳もて黙して居りぬ寒雀
 新井奥邃(あらい・おうすい)の言葉だ。影響と書いて、かげひびき。わたしは、この言葉が好きだ。
 影響という字は、画数が多く、口角泡を飛ばしてがなりたてる政治家のようで、なんだか厳めしい。この作品はだれそれの影響によって作られたもので…、美術館の展示物の説明文のようでもある。そっけなく、死んでいる。
 かげひびきは、もっとかそけく、静かに、生きている。
 昨日の朝、保土ヶ谷駅のホームのベンチに座っていると、ケータイが鳴った。心当たりの人があったけれど、ディスプレイには名前でなく、電話番号が表示された。登録している人からではない。男鹿のおばさんからだった。
 息子のパソコンで、この日記を読ませてもらったという。ケータイ電話でも見れるとも。日記のネタにされてしまったね。それで、わたしも一句作ってみたのよ。寒雀 孫に取られて 泣く子かな どう? もっとも、これは、わたしと孫のあなたにしか分からない句だけどね。これから、たまに見るからね。じゃあ、5月にまた。頑張ってね…。
 ぽかぽかとこころが温まったことは、かげひびきとなって1日の仕事に影響する。理想と現実という言葉で切って捨てられるものではない。
 米粒を置いて逃げろや寒雀

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