孤独

 

・雀來て梅の花咲く天が下

少年の君は
よく人のマネを していたね
マネして 人を
笑かして いた
笑ってもらえると うれしく
飽きもせず 人のマネをした

あるとき
だれよりもいっしょに遊ぶ
好きな子の マネをした
マネすると
そうするだけで
その子がずっと そばに
いる気がし
いや
ぼくが その子で
その子が ぼくで
まるで 一心同体
もう ひとりじゃない

マネするぼくは 人気者
人気者のぼくは 調子をこいて
来る日も来る日も マネばかり

ぼくがマネするその子は 傷つき
だんだんぼくと
話をしてくれなくなった
そうして やがて
ぼくから 離れていった

さびしさ からマネし
さびしさ から人気者
そして
孤独を 知った

その子とスーパーマーケットの前ですれ違う
髪の毛が白くなり すっかり
大人になったその子は
ぼくに 気づかない
ぼくもその子に 話しかけない
あれからずっと 離れたまま
いまも
これからも
ずっと ずっと
永遠に

・梅咲くや雀來りて飛び立ちぬ  野衾