意味ないじゃん

 いつも行くコットンクラブで飲んでいたら、保土ヶ谷界隈でこのところ一躍有名になったナベちゃんが入ってきたので、
 「あれ、ナベちゃん、革ジャンは?」と訊いてみた。
 「うん、着ていない」
 「そりゃ見ればわかるよ。どうしたの?」
 「家に置いてきた」
 「家に?」
 「そ」、ナベちゃん満足気。
 「家に置いてどうするの?」
 「だって、このあいだみたく失くしたら嫌だもん」
 「そりゃそうだろうけど、冬に革ジャン着ないんじゃ意味ないじゃん」
 「平気平気、黒いのもあるから」、と、ナベちゃんあくまで満足気。それに、どうも微妙に会話がかみ合わない。
 「でも、そんなセーターだけじゃ寒いでしょ」
 「寒くない」
 「そんなはずないよ、今日は相当寒いよ」
 「いいのいいの。気にしない気にしない」
 横で二人の話を聞いていたスーさんが、
 「失くしたと思っていた革ジャンが戻ってきたので、それで十分なんだよな、ナベちゃん」
 「……」と、ナベちゃん、やっぱり満足気。
 ふむ。気持ちはわかるけど、おかしいよ、どこか変でしょそれって、だってさ…。
 「ヘ〜〜ックショイ!
 ほらね。