就活

 就職活動のことを略して最近ではそう呼ぶらしい。知人の甥っ子が大学四年生で、先日、大手企業の面接を受けたことを知人から聞かされた。ひどく緊張し、グループ面接で面接官から質問されたことに対してトンチンカンなことを答えてしまったらしい。退室するとき面接官のノートを覗き見たら、一緒に面接を受けた二人の欄には結構な文字数でコメントされていたのに、自分については数文字で終わっていたとか。
 彼は一念発起し漢字検定三級の問題集を買った。それを見た知人は、いまさらそんな問題集を買って就職活動に役立つとでも思っているの、と聞いたそうだ。大学に入ったとはいうものの、遊んでばかりで、今まであまりに勉強してこなかったからというのが彼の言い分。
 知人は甥っ子に言った。「どこもダメだったらどうするつもり?」
「警察官にでもなろうかと…」
「なんで?」
「ヒマそうだから」
「アハハハハ…。そんなわけないじゃない。いろんな事件が起きて、てんてこ舞いしてるわよ」
「でも、ぼくの近くの派出所のおまわりはヒマそうだよ。自分、バイクでよく捕まるから分かる」
 彼はその付近では目をつけられているとのこと。まず人に憶えてもらうことが就職活動の始まりと考えれば、あながちへんてこな考えとばかりも言えないかもしれないが。