女の小便

 

 インフル一過積年の疲れ運び去り

中野好夫の『司馬江漢考』を読んでいたら、
女の小便のことについて記されていました。
司馬江漢というのは、
江戸時代の絵師、蘭学者です。
中野好夫はわたしの最も好きな書き手の一人で、
今までかなりの数の本を売りましたが、
中野さんの本だけはおそらく一冊も売っていません。
人にあげたものはあります。
ところで『司馬江漢考』ですが、
これは昭和六十一年といいますから、
一九八六年に出た本。
今から二十六年前になります。
中野さんの本ですから、すぐに買ったのですが、
つんどく時間が長く、ずっと読んでいませんでした。
思うところあって読み始めたら、
さすが中野さん、
やっぱり面白い。
この本は、
現在残っている書簡から、
司馬江漢の人物に迫ろうとした随筆・評伝ですが、
司馬江漢なるひと相当に変わっていたらしく、
それは書簡からも充分うかがい知れます。
女の小便の話は、
山領主馬宛書簡のなかに出てきます。
京(都)にあしき事として一項を設け、
「女の小便、是はタゴへする故に、尻をまくり後ろ向になる。
多くは尻をふかず、一向の田舎風なり」
そう記した後で、江戸の能き事として、
「女の小便するを不見」とありますから、
江戸ではそういう風習がなかったんですかね。
ちなみにわたしは子どものころ、
「尻をまくり後ろ向にタゴへ小便する女」
を見たことがあります。
そんな珍しいことではなかったと思いますよ。
昔は京都でもそうだったんですね。

 顔マスク眼鏡曇りて苛苛す