モンクな気分

 セロニアス・モンクを学生のとき初めて聴いて、なんじゃこりゃと思った。めちゃくちゃ調子っぱずれでデタラメで、適当に鍵盤を叩いているようだったから、これならピアノができない俺にだってできるわい、と不遜にも思った。
 しかし、そんなことはないのだった。今だって調子っぱずれに聞こえることもあるけれど、ある気分の時に聴くと、なんだか、話の通じる友達と一緒にいるようなそんな気さえしてくる。気持ちが落ち着く不思議な音。
 1954年のクリスマス・セッションで、マイルス・デイヴィスが自分のソロ演奏中にモンクがピアノを弾くことを拒んだという話があるが、それぐらいモンクの個性は強かったということだろう。
 モンクのピアノソロを聴いて気持ちが落ち着く自分と、とても聴く気になれない自分がいるわけだが、このごろは落ち着くほうが多くなったかも知れない。
 安原顯さんにとってのピアノ・ソロ「ベスト1」が『セロニアス・ヒムセルフ』というのも面白い。