営業裏話 その2

 きのうの昼は、いつものように専務イシバシ、武家屋敷ノブコといっしょに外出。桜木町駅近くのスパイシーというカレー屋でカレーを食べた。カレーを食べながらする話ではないな、と一瞬頭をかすめたが、長い付き合いだし、ま、いっか、ということで、隣りにいたイシバシに「スイマグ飲んでる?」と訊いた。
 「それがね。飲んでたんだけど、ゆうべはちょっと飲むのをやめたのよ」
 「なんで。せっかくあげたのに。お腹の調子がスコブルよくなり、肩の凝りも取れたって喜んでたじゃないの」
 「そうなんだけどね。きのうOさんと営業で出かけた折に、ところかまわずオナラがぷっぷと出るのよ。ぷっぷ、ぷっぷ、ぷっぷ、ぷっぷ。外を歩いていてもぷっ。東大名誉教授の研究室でもぷっ。ノーベル賞と言ったとたんに、ぷっ。あのー、と言ったら、ぷっ。おいとまのあいさつをしてお辞儀したら、ぷっ。あまりに出るものだから、それでね、けさはちょっと飲むのを控えたわけ」
 「あはははは… そりゃ、おかしいわ。でも、それって、腸が活発に動いているっていう証拠じゃないの」
 「あ。そうか。なるほど」
 「そうさ」
 イシバシの隣りの武家屋敷は、二人の会話を聞いてくすくす笑っている。ちなみにスイマグは、西式健康法ではよく使われる下剤で、水酸化マグネシュウムが正式名。腸内容の浸透圧を高めて水分の吸収を抑え、液状にし排泄を容易にするというもの。スイマグの原料は海水100パーセントで、化学物質は一切使われていない。
 「それ、おもしろいからさ、明日のよもやまに書いていい?」
 「いいわよ。タイトル何にするの? ぷっぷ、ぷっぷ?」
 「営業裏話 その2、でいんじゃない? ところで、ぷっぷとやったとき、Oさんはどうしていたの?」
 「いや、なにも。悪いと思って黙っていたんじゃないかしら。でも絶対に聞こえていたはずよ。ぷっぷ、ぷっぷ、ぷっぷ、ぷっぷ。そりゃもう際限がないんだから…」
 「へ〜。あはははは…」