まじめな本だが

 五木寛之の『養生の実技 ―つよいカラダでなく―』(角川oneテーマ21)を読む。
 五木さんは若い頃から腰痛・ストレス・過呼吸・偏頭痛など無数の病をかかえ、悩まされながら、それを治すよりも治(おさ)めることを心がけて今日まで来たという。なるほどなぁ〜と思わされながら一気に読んだ。最後の章に「私自身の体験と偏見による養生の実技100」というのがあり、途中までふんふん、ふんふん、とページをめくっていたのだが、90番を読み、思わず、ブッと笑ってしまった。曰く、「こんな時代に毎日、明るく爽やかに生きていける人は、病気である。「世間病むが故にわれ病む」というのが人間的な人間である。だからこそ、病める時代に病みつつ生きる養生の工夫が必要なのだ」。ね、可笑しいでしょ。『風に吹かれて』『ゴキブリの歌』から始まって、五木さんは、やはりエッセイの名手だなぁ。