至福のとき

 自分に宿題を課し、持って帰った仕事を土日で片付け、やっと解放された。
 本を読むもよし、音楽を聴くもよし、昼寝するもよし、冷蔵庫にある残り物で料理するもよし。そこで、まず、ハウリン・ウルフの『モーニン・イン・ザ・ムーンライト』を聴いた。
 渋い! あのダミ声、真似したくても真似できない。『浪曲子守唄』で有名な一節太郎の声を万力で捩じ上げたら洩れ出るかと思われるような強烈な声ともつかぬ声。と、フッと返ってファルセットになるあたりがまた堪らない。セクシーとはこういうことをいうのか。『エイント・ゴナ・ビー・ユア・ドッグ』のライナーノーツによれば、ウルフの音楽にもっとも長く連れ添ったギタリストのヒューバート・サムリンは、「ウルフを初めて聴いたのは、14歳のときだった。ウルフとブルースを演るよりもマシな人生がこの俺にあるとは思えなかったね」と、最大級の賛辞を送っている。く〜、泣かせるねえ。そんなに褒められたら面倒見るしかないじゃん。
 気分好転、今度は冷蔵庫の中をあさり、牛蒡と大根と焼き竹輪があったので、味噌汁みたいなものをつくった。これがなかなか美味い。だいたい日本の煮物なんてえものは、日本酒を少々入れてあげるとなんとか普通に食える味になる。梅干があり、ツナ缶があり、母が送ってくれた佃煮もあるから、日曜の昼食としてはこれで充分。久しぶりに休日らしい休日を過ごした次第。
 今日はいよいよ『新井奥邃著作集』第9巻の下版だ。