こころを動かす

 営業のアルバイトで来ているMさんという大学四年生の女性がいる。専務イシバシから要諦を教わり、この頃は一人で外出するようになった。大学の先生に会って話を聞いてくる。企画を最後までまとめることは相当の経験を要するからまだ無理だし、そこまでは会社も要求していない。ところがMさん、なにがどう効を奏しているのかわからないが、会社に来るようになってほんの数ヶ月しか経っていないのに、出版につながるような話をいくつも持ってくる。
 武家屋敷の大学時代の恩師に企画の話で会いに行く時その話題になった。すると武家屋敷が「人のこころを動かす才能があるのよ」と言下に言った。きっとそうなのだろう。技術についてマニュアル化すれば際限がないけれど、それをいくら精緻に重ねても人のこころを動かせるわけではない。営業というのはおそらく人のこころを動かせるか否かが勝負の分かれ目だろうし、それは技術とは違ったところにあるようだ。
 そういえばMさん、面接を受けに来た時、人の話を聞くことが好きと言っていた。で、眼キラリ! なるほど!