怪我の功名

 ヤンキースの秀喜マツーイが右足首の捻挫をして、休場するかと思いきや、そうはせず、それどころか、ホームランをばんばん打っている。
 秀喜マツーイは左打ちで、スウィングする瞬間に踏み出す右足が力強く前にガシッと踏み出され、大地をつかみ、鋭い腰の回転によりホームランを生み出す。ところで今回の右足首の捻挫により上記「右足が力強く前にガシッと踏み出され、大地をつかみ」の部分が弱くなった。踏ん張りが少〜しゆるんだおかげで腰の回転がさらに鋭さを増しホームランの増産につながっているという。なるほど。これを怪我の功名と呼ばずしてなんと呼ぶ。
 なんでもそうだが、新しいことというのは、昨日までのバランスを一つ欠くことによってしか生じない。たとえば歩くこと。二本足でバランスをとって立っているかぎりは一歩も踏み出せない。重心をどちらかの足に移動させ、意識的に不安定な状態を作り出し、反対の足を宙に浮かせ前に振り出すことによって輝かしい第一歩が生まれる。昨日までのバランスの温存に汲々となっていてはいけない。
 秀喜マツーイはもちろん意識して怪我をしたわけではないだろう。が、怪我を天からの授かりものとして更なる第一歩とした。さすが秀喜マツーイだ!