笑う哲学者

 木田元さんの新刊『新人生論ノート』(集英社新書)を読んでいたら「笑いについて」の章で「君は哲学者なのによく笑うな」とほかから指摘されることがあるという記述があって爆笑。何度かお目にかかったことがあるが、たしかに木田先生はよく笑う。カニの甲羅を彷彿とさせる二十世紀最大の哲学者ハイデガーの研究家であることを思えば、木田先生も眉間に皺を寄せていると想像したくなる気持ちもわからないではない。
 思い出したのが詩人の山之口貘。金に困ってどこぞの女将に無心に行ったら、詩人が金を借りてはいけないだったか、持ってはいけないだったか、とにかく体よく断られた話を読んだ記憶がある。セレブの詩人というのもあっていいと思うのだが、ちょっとイメージしづらい。詩人=金に困っていても書く詩は凄い、というイメージがいつのまにかできたのだろう。