音楽は、その日その時の気分で、ほとんどデタラメに聴いているわけだが、CDを1枚、セットものなら2枚、最初から最後まで聴くと、はは〜、こういう気分になりたかったのかと後から気づくことがある。
 マイルス・デイビスのライブ録音の2枚組アルバムを聴いた。『ダーク・メイガス』がそれ。いわゆるエレクトリック・マイルスといわれた時代の作品で、この時期のものとしては『ビッチェズ・ブリュー』がつとに有名だが、邪悪さにおいて『ダーク・メイガス』が極北だろう。中のジャケットに写るマイルスは人間というよりもどこか猿に近く、変な汗をかいている。部屋で聴くギリギリまでボリュームを上げズンジャッジャッーズンジャッジャッー…と、ほとんど殴るようなドラムの音を聴いていると心臓がバクバクしてくるのが分かる。トータル100分近いライブ演奏を浴び、ああ、なんだ、汗をかきたかっただけかと思った。