さまざまのこと 12

 

キャッチボールもよくやったなぁ。これも弟と。
歳が三つも離れていれば、子どもにとってはそうとうの違いであるはずなのに、
なにをするにも、弟はとにかく機敏かつ運動神経が抜群によかったから、
あそんでいて、
歳を意識することは、ほとんどありませんでした。
さてキャッチボール。
農家のこととて、家の前がけっこう広く、キャッチボールをするにはじゅうぶん
でした。
球は、野球の軟式ボール。
グローブは親に買ってもらいました。
弟は鶏小屋の前に立ち、わたしは田んぼを背にして立つ、あるいはしゃがみ、
キャッチャーのかまえ。
わたしが暴投を投げても、鶏小屋の屋根にあたったり、
うしろに落ちるぐらいだから、もんだいないけれど、
弟が暴投を放つと、田んぼに落ちることになるから、拾うのがたいへん。
収穫時期の乾田なら平気でも、
田んぼに水が張られているときは、
靴と靴下を脱ぎ、そろそろと湿田の泥に踏み入れなくてはならず、
なんぎしたものです。
やっと拾って、足をふき、靴下と靴をはく。
キャッチボール再開。
と、
ほどなく弟がまた暴投。そんなときも間々あり。
わたしが拾いに行くこともあったけど、
アタマにきて、弟を拾いに行かせることもありました。
ケンカになることもあったっけ。
しかし、
そういう時間をかさねているうちに、わたしも弟も、それなりに上手くなり、
弟の投げるボールの球速は増し、
わたしが中学三年、弟が小学六年生のときの、
町内会対抗試合では、決勝戦で井内チームに敗れはしたものの、
準優勝できたのは、
家の前での日ごろのキャッチボールの賜物であったか
と、いまになって思います。
弟がピッチャーで、わたしが左利きのキャッチャー。

 

・うぐいすや遠く近くの晴れの日を  野衾