さまざまのこと 10

 

子どものころ、川釣りもよくやりました。おもにアブラハヤですが、
わたしの地域ではチラランジと呼んでいた。
ふるさとの町は、
川の名称から井川町といいますが、
蛇行する小河川のあちこちをいろいろ試して歩き、
何か所か、
よく釣れる場所、穴場を見つけたものです。
釣竿は、立派なものである必要はなく、
短い竹でじゅうぶん。
おぼつかない手つき、指先で、針にエサのミミズを付け、
オモリをトプンと水に落とす。
川面に同心円の輪ができ、しずかに広がる。
すでに見えていた魚たちは、一瞬おどろいてエサから離れ、また近づいてくる。
あっ!
浮きがクッと沈むのと、釣竿をにぎる手が引かれるのがほぼ同時。
川面に魚影がくっきりと見え、
竿を煽ると、チラランジが宙に舞い、踊る。
心臓がどきどきする。
いままでなんの縁もゆかりもなかったこの魚が、いまわたしの手のなかにいる。
口から針を外し、水を入れたバケツに放すと、
チュルチュルッ、
と勢いよく泳ぎまわる。
あたりの緑が日に照らされ、小鳥たちがさえずる。
忘れられない一日。

弊社は、本日より通常営業となります。
よろしくお願い申し上げます。

 

・田畑撫で青き風吹く五月かな  野衾