エリナー・ファージョンさん 1
はっきりとはおぼえていませんが、五十歳を過ぎたころ(すこし前だったか?)
から、
石井桃子さんが翻訳した児童文学に親しみ、
そのながれで、
尾崎真理子さんの『ひみつの王国 評伝 石井桃子』を読みました。
エリナー・ファージョンさんのことが視野に入ってきたのは、
尾崎さんの本を読んだことが、
きっかけだったと思います。
『ムギと王さま』『リンゴ畑のマーティン・ピピン』
をたのしく読みました。
となると、伝記好きのわたしとしては、
ファージョンさんの人となりをさらに知りたくなり、
姪っ子のアナベル・ファージョンさんが書いた
『エリナー・ファージョン伝 夜は明けそめた』を読んでみました。
本の帯の背に「天衣無縫の人生」
とあります。
すでに六十歳をこえてふとっていたけれども、
エリナーはあいかわらず世間一般のしきたりにはまったくしばられず
自由に振る舞っていた。
ある日、
窓拭き人がやってきて、はしごを使って家の表側の窓を拭きはじめた。
ところが、
じきに彼はいそいではしごを下りて、
お勝手にいるテレサ・ドッズのところへやってきて叫んだ。
「寝室の窓が拭けません。すっぱだかの女の人が中にいるんですよ」
「かまわないわよ。
ファージョンさんはいっこう気になさらないから」
とドッズ夫人は叫んだ。
「だけんど、あんな人がいて、どうやって部屋ん中に入って、
窓の内側を拭けるんですか? わたしゃできません」
窓拭きはきっぱり言った。
それで
テレサ・ドッズも、エリナーに部屋着を着るよう説得しなければならなかった。
そして、やっと若い窓拭きはふたたびはしごをのぼった。
(アナベル・ファージョン[著]吉田新一・阿部珠理[訳]
『エリナー・ファージョン伝 夜は明けそめた』筑摩書房、1996年、p.269)
まさに天衣無縫。六十をすぎて、すっぱだかのファージョンさん。
若い窓拭き職人さぞやおどろいたろうなぁ。
うらおもてがないというか、
なんというか、
ファージョンさんをますます好きになりました。
・春泥や待ちきれなくて自転車を 野衾

