カフカさんの日記 4
1912年6月7日の日記は、
「ひどい話だ。今日は何も書かなかった。明日は時間がない。」
(カフカ[著]谷口茂[訳]『決定版カフカ全集7』新潮社、1992年、p.202)
たったこれだけ。
それからひと月ほどおいて、つぎの行、
7月6日の月曜日。
「少し書き始めた。少し寝ぼけている。
それに、このまったく見知らぬ人たちのなかにいて頼りない気持でいる。」
(同、p.202)
この7月6日のところに脚注番号が付されており、
巻末の訳注を見ると、
こんなことが記されていて、目をみはった。
「この記述よりも前に、ワイマルおよびハールツへの休暇旅行
(6月28日から7月29日まで)が始まっている。」
(同、p.494)
わたしは、この「ハールツ」に鉛筆で
くろぐろ傍線を引きました。
ハルツ山は、ゲーテさんがそこを訪れ、
神秘体験といってもいいぐらい生涯忘れることのできない体験をした場所
だからです。
それをわたしはアルベルト・ビルショフスキさんの
『ゲーテ その生涯と作品』で知りました。
また、
ヒトラー暗殺計画に参画し処刑されたキリスト教の牧師
ディートリヒ・ボンヘッファーさんもそこを訪れ豊かな時間を過ごしています。
土地の縁、地霊ということを想像します。
・口元をひたすらじつと母の貌 野衾