ルネ・ラリック展

 日本橋高島屋8階ホールで開催されているルネ・ラリック展を見てきた。パンフレットによれば、ルネ・ラリックは1900年のパリ万博で注目を浴びた宝飾家で、20世紀のはじめにガラス工芸に転向、1910年代から30年代のアール・デコ期を代表するガラスの巨匠として活躍した。
 香水瓶、置時計、花瓶、立像、ブローチ、カーマスコット、常夜灯、ほかいろいろ。ガラスというと外界を隔てる透明で冷たい「窓」をイメージするが、それと全く反対の印象をはじめて持った。「バッカスの巫女」の微妙な色づきはどうだ。つくりたての飴のような蕩ける肢体がたゆたう。「ツタの台付裸婦」と題された立像や「スピード」と題されたカーマスコットに見られる裸婦の線と充溢する豊満な肉体は、ガラスという素材がその表現にとってもっとも相応しいものと思わされる。
 この展覧会を企画監修された美術工芸史家の池田まゆみ氏が代表を務める日本ガラス工芸学会研究企画委員会編による、ヨーロッパガラス工芸技術の古典『ラルテ・ヴェトラリア』の本邦初訳を小社から刊行することになっている。
 ルネ・ラリック展は今日まで。