文字のない絵本

 学生の時に好きで読んだ(見た?)文字のない絵本‘The Changing City’がどうしても見たくなり、アマゾンで検索したら、あった! のはよかったが、値段が10倍に撥ね上がっていて買うのをしばらくためらっていた。
 ミュラーというひとの作で、観音びらきの大判の絵が8枚(だから絵本というのは正確ではない)。同じ場所を数年刻みに描いている。右手に剣、左手に天秤(だったと思う)を持っている目隠しされた女神と眼の見えない老人がどの絵にもでてくる。街の変化にともない女神と老人がどうなっていくのか、文字はないけれど短篇小説の趣があって好きな絵だった。どうしても欲しくなり、やっぱり注文することに。姉妹篇に‘The Changing Countryside’がある。モチーフは同じでも、こちらは白い猫が主人公。冬、雪景色のなかの猫を探すのは一苦労。ふたつとも最後が悲しい。『幻の鳥 ガーニーズ・ピッタ』の構成を考える時、その時は気づかなかったが、あとから思えば、あの二つの絵本が下敷きになっていた。