痛みの震源地

 まだ痛い。歯。医者が、それも美しい女医が、疲労からだと思われますから休める時に休んでくださいと言うから、素直が信条のわたしとしては背骨が痛くなるほど休んだ。眠くもないのに床に臥せっていた。
 ところが夜中、猛烈に痛み出して2回分もらった痛み止めの1回分を悔しかったが飲んだ。痛みに敗けたようで情けなかった。時計を見たら3時20分。右の上顎奥の治療した歯が疼いて我慢できない。医者は疲労のせいからだろうと言ったが、それもあるかもしれないが、わたしの読みは、あと1本だけ歯茎に埋まっている親知らずが隣りの歯、すなわち痛み出した歯の根の神経を刺激しているのではないかということ。
 わたしの親知らずは5本あった。相当に親知らずだろう。普通、最大でも4本のところ、わたしの場合5本。1本がユリの根みたいにカップリングされた状態の親知らずで、学生の時、大学病院の医者が珍しがった。以来、ことあるごとに親知らずを抜き、ユリの根の下の部分1個を残すのみとなった。それが微妙な動きをして神経に当たっていると思えてならない。なら、そのことを医者に尋ねてみればよかったようなものだが、そのときは思い至らなかった。
 歯が1本痛いだけでこのざまだ。右上顎奥の歯を震源地として、頭と顔のどこを指で押してもそれなりに痛い。痛い痛い、あー、痛い! 抜いてしまいたい!