科学も文化

 

日本の大学での化学教育と研究が理学部だけでなく、
初めから工、医、薬、農の応用も含めた諸学部で行われたことは
日本の1つの特色で、
これが広い分野での日本の化学の発展を可能にしたともいえよう。
しかし、
長いユダヤ・キリスト教文明の伝統の中で科学が発展した西欧と違って、
科学の実用的価値を過度に重視する傾向が強く、
科学を文化の1つとして捉え、
自然の謎を解き明かすことを主眼として、
長期的な視野で科学を育てる気風が弱かったことは
化学に関しても例外ではなかろう。
(廣田襄『現代化学史――原子・分子の科学の発展』
京都大学学術出版会、2013年、p.155)

 

化学史の本なので、俯瞰した記述はここで終っていますが、
国の予算の使い方を考えるとき、
著者の廣田さんが指摘していることは、
過去のことでなく、
いま現在の問題であるし、
こんご深く考えていかなければいけない視点であろうと思います。

 

・ガチガチと音まですなる百足かな  野衾