詩経の恋愛詩

 

白川静さんの文章は、漢文調といえばいいのか、
スッキリしていて読んでいて心地よく、
すらすらとはいきませんが、
お盆休み中、
けっこう読み進みました。
すると、
以下に引用するような箇所に出くわし、
謹直な白川さんの隠れた一面に触れたようで、
うれしくなりました。

 

全体的にいえば、これら小雅中の恋愛詩は、
様式的には最も民謡に近く、その発想においても感情においても、
大部分は国風と殆んど異なるところのないものである。
恋愛詩はもともと庶民的な発生をもつものであり、
貴族社会においては、祝頌詩から展開した恋愛詩を考えることができるとしても、
その社会の感情生活そのものが、
庶民社会ほどに解放的でありえなかったし、
権力や財力を欲望達成の手段とするような社会が、
恋愛詩のよき地盤でありうるはずはなかった。
(『白川静著作集10 詩経Ⅱ』平凡社、2000年、p.637)

 

・馬冷やす若き父の背見えにけり  野衾