井戸浚

 

井戸浚(いどさらえ)は夏の季語。
井戸の水を汲み出し、底に溜まったゴミや泥を取り除きます。
いまも秋田の実家には池が二つありますが、
子どものころ、
家裏の池はいまよりずっと大きかった。
お盆のころだったでしょうか、
一年に一度、
水を掻き出しては井戸浚を行っていたはず。
水を湛えているのがふつうですから、
水が汲みだされた池は、
たとえていうなら、
見慣れた風景から巨大な奥歯が一本引き抜かれたような。
不思議な光景で、
見ていて飽きなかった。
池の底の小さな生き物たちが、
はじめて感じる太陽を皮膚の裏、こころの底から眩しがっていた。
それと、
どくとくのあの臭い。
鯉をたらふく食って欲望を満たした鯰が
隠し事を暴かれ、
体をくねらせた。

 

・診察を終えて楽しも豆ご飯  野衾