韻文のこと

 

広辞苑で【韻文】を調べると、
①一定の韻字を句末に用いて声調をととのえた文。
歌・詩・賦の類。
②詩の形式を有する文。
すなわち、単語・文字の配列や音数に一定の規律のあるもの。
詩・短歌・俳句の類。⇔散文。

 

頭韻、脚韻、また、韻を踏むという言い方もありますが、
洋の東西を問わず、
古くなればなるほど、書かれた詩文は韻を踏んでいて、
なんでそうなっているかと不思議でしたが、
文字が書かれ記録される前に音吐朗々、
声を発して朗誦されたものであったと考えれば納得がいく。
韻を踏むことで格段に覚えやすくなるのは、
今ならラップのことばを連想すればいいだろうか。
覚えやすく暗唱しやすい。
文字がない時代のことを考えればなおさらだ。
文字がなくても、
大事なことを忘れずに人に伝えたいとなれば、
忘れないための工夫が要る。
記録のない時代はまた記憶の時代。
韻を踏む韻文は、
あってもなくてもいいものでなく、
歴史的には、
必要不可欠のものとして人間が身につけたものだろう。
自由詩、散文詩、
という言い方もあるけれど、
詩の本源をたずねれば、
どうやらそれは韻文ということになり、
文字が生まれる前、口承文学の壮大な世界が浮かんできそうだ。

 

・紫陽花や刻を湿らすモーツァルト  野衾