ゲーテの老人力

 

「とにかく、私には、
自分の作品がぜんぜん見おぼえがなくなってしまっていることが、
よくあるね。
このあいだもあるフランスのものを読んで、
この人はなかなか気のきいたことを言うな、
私自身でもこうとしか言わないだろう、
などと読みながら考えたものだ。
ところが、よく見てみると、
私自身の書いたものからの翻訳じゃないか!」
(エッカーマン著/山下肇訳『ゲーテとの対話(上)』岩波文庫、1968年、p.255)

 

この会話がなされたのは、1827年1月14日、日曜日夜のこと。
ゲーテは1749年生まれだから、
このときすでに75歳を過ぎている。
年齢を考えると、さもありなん、ということだが、
あの文豪ゲーテにしてこうだったのか
と思うと、
ほほえましい気がする。

 

・俯きて旧知の友の春が来る  野衾