天気のごとく

 

いわゆる森田療法を創始した森田正馬(もりた しょうま)に関する本を読むと、
「あるがまま」ということばがたびたび登場します。
シンプルなことばだし、
あるがままといわれれば、
そうですか、
あるがまま、ね、はい、あるがままにやってますよ、
と、
べつに取り立てて問題にするようなことでもない気がします
が、
こんかい、
畑野文夫さんの『森田療法の誕生 森田正馬の生涯と業績』
を再読し、
「あるがまま」が
ことばそのものはシンプルでも、
そのことが指し示す内実は
抜き差しがたく切実で味わい深いものであると感じました。
AIによって人間が取って代わられることが夢物語でなくなった時代にあって、
きのうも天気予報は見事に外れ、
横浜地方は夕刻雨が降ってきました。
天気予報は、
当たることもありますが、今でもよく外れます。
おみくじよりは少しマシ、
でしょうか。
にんげんの喜怒哀楽の感情は、
天気のごとく予測不可能なところがあります。
コントロールが難しい、
もっといえば、不可能に近い。
コントロールが難しいのであれば、
コントロールしようとしないで放っておくしかありません。
そうすると、
いつしか、
これも天気のごとく、変化します。
永久に変わらぬ感情というものはありません。
ある感情にとらわれたとき、
それから逃れたくて
ああでもないこうでもないと考えたり、
逆にプラスの感情であれば永続させたいと願ったりしますが、
感情というのはつねに変化し、
とどまっていません。
怒りがもたげたら怒ったなり、
悲しみにとらわれたら悲しいなり、
喜びも楽しさも長つづきすることはない、
そういうことをどうやら森田は「あるがまま」と称んだようです。
さて3月29日(日)15時から春風社にて、
畑野文夫さんと
『森田療法の誕生 森田正馬の生涯と業績』をテキストに、
対談を行います。
興味のある方はふるってご参加ください。
スペースの関係がございますので、
参加ご希望の方はお早目に電話かメールでお知らせください。
ちなみに森田の名まえは、
辞書を引くと、
「まさたけ」となっているものもありますが、
「しょうま」であることが
畑野さんの本にくわしく丁寧に説明されています。

 

・古時計午前三時の淑気かな  野衾