空の養分

 

日曜の朝、テレビを点けたら、
『粘菌 脳のない天才』という番組をやっていました。
おもしろそうなので見ていたら、
やっぱりおもしろかった。
粘菌が迷路の出口までのルートを最短で見つけたり、
塩が粘菌にとって危険でないことを学習したり、
それを他の粘菌に伝えることができたりと
まるでSF映画のような世界。
ということで興味深く見たわけですが、
その番組の中でちょこっとだけ
粘菌以外の植物の生態についても触れる場面がありました。
そのときの説明によると、
植物の知能は根にあり、
人間でいえば、
それはちょうど
頭が土に埋まっている状態であるとして、
人形が土入りの鉢に逆さに挿されたオブジェが映し出されました。
それを見て、
あ、
これはどこかで見たことがあるぞ
とひらめき、
すぐに安藤昌益の『自然真営道』『統道真伝』を思い出した。
植物の根に知能があって
地中から養分を受け取っていることになぞらえれば、
人間の頭が体の上にあるのは、
地中でなく
空から養分を受け取るためではないか、
空を見ていろいろいろいろ思うのは、
そのこととなにか関係しているのではないか。
たとえば谷川俊太郎の詩「かなしみ」
の冒頭、

 

あの青い空の波の音が聞えるあたりに
何かとんでもないおとし物を
僕はしてきてしまつたらしい

 

などというのも、
人間が、
空に蒔かれた種から育ったことを
詩人の感性でうたっていて、
人間は
地上に立ってからも相変らず空から養分を受け取って生きている
のではないかと思いました。

 

・店主煙草を冬ざれの骨董店  野衾