上田薫先生を悼む

 

今月一日に教育学者の上田薫先生がお亡くなりになりました。
享年九十九。
2008年に弊社から
『沈まざる未来を 人間と教育の論に歌と詩と句「冬雲」を加えて』
を上梓しています。
以前勤めていた出版社の頃にお目にかかり、
以来、
連絡をとっていました。
弊社十周年のパーティを開催する際、
あいさつをお願いしましたら、
「会場に体を横にできる場所がありますか?」
と訊かれ、
どういうことだろうと不思議に思いましたが、
こちらの疑問が声に出ていたのか、
すぐに、
「30分休めば、二時間体を起こしていられるのです」
とおっしゃられた。
そして当日、
会場のすぐ裏手で休んでいただき、
それから登壇していただいたのでした。
当時すでに八十八歳。
ありがたいことでした。
『沈まざる未来を』は、
おそらくじぶんの最後の本になるだろうから、
それをあなたに作ってもらいたいと電話でたのまれ、
光栄に思いつつ作らせてもらった本でした。
ご冥福をお祈りいたします。

 

【伊良湖崎より神島を望む】
・島の灯や微睡(まどろ)むごとく秋の暮  野衾