欲望について

 

モンテーニュがこんなことも書いていたのをすっかり忘れていました。

 

牝馬の匂いをかぐとどうにも押えようのなくなる老いぼれ馬を、
わたしはとうとう種馬にやっちまったことがある。
容易にやれると、この馬はいつの間にかその牝馬どもにげんなりしたが、
でもよその牝馬が始めて彼の柵のわきを通るのをみると、
相変らずうるさくいななき、前と同じように昂奮した。
我々の欲望は、その手元にあるものには眼もくれず、
それを飛び越えて自分が持たないものを追いかける。
(関根秀雄訳『モンテーニュ随想録』国書刊行会、2014年、p.724)

 

「我々の欲望は困難にあうと増加すること」の章のなかにあることば。

 

・しらさぎ飛翔妊婦の腹の和毛(のこげ)かな  野衾