夢のはなし

 

雨模様の道を静かにあるきながら、
障害者教育の専門家がインタビューに答えています。
インタビュアーはマイクを持ちながらさかんにうなずく様子。
わたしはたましいだけの存在で、
ふたりのうしろからふわふわ宙に浮いたまま
ついていきます。
とうとう雨が降りだしました。
道がどんどんぬかるんできます。
ふたりの足はすでにくるぶし辺りまで水に浸かり。
道は窪地にさしかかり、
雨がたまって沼のようになっている場所へ入っていきました。
ふたりとも傘は持っていません。
ずんずんずんずん水のなかに入っていき、
ずんずんずんずん、
ずんずんずんずん、
とうとう頭もすっぽり入って、
全身見えなくなってしまいました。
泡がぷつぷつ浮いてきました。
しばらくすると、
ふたつの頭が水面から現れ、
やがて首、肩、胸、腹、腰、脚、膝、脛、足。
専門家は何事もなかったかのように話しつづけています。
インタビュアーはなんだか必死。
頬を雨が伝わります。
汗だったかもしれません。

 

・海沿ひのうすむらさきの五月かな  野衾