わが家の一生懸命機械

 

吉田戦車のマンガに『一生懸命機械』がありますが、
わたしの家にもありまして、
ふだん当たり前すぎて気づかずにいたのに、
こわれそうになると
みょうな雄たけびやため息を漏らし、
いっしょうけんめだったんだなー
と感じ入ることしきり。
二十年も使っていた冷蔵庫を二年前に買い換えましたが、
こわれるまえ何度もガオ~ンガオ~ンガガガオ~ンと大声でうめいたと思ったら、
つぎにごく低い声でゴーーーーン
とうなり、
ついには冷気を失ってしまいました。
文句も言わず、
ほんとよく冷やしてくれました。
さて、
このごろはエアコン。
これまた十年以上使ってきて、
数年前ガスを入れ直してもらいました。
その際、
工事に来てくれたひとが、
つぎこうなったら買い替えたほうがいいでしょうね
と言っていたことを思い出します。
「こうなったら」とはどうなったら
かといえば、
たまにブファ~ッと大きなため息を漏らす
そのことでありまして。
ブファ~ッがだんだん頻繁になり、
ブファ~ッブファ~ッブブファ~ッ
そして五日ほど前でしたか、
とうとう、
暖房に設定しているのに、
吹き出し口に手を当ててもただの風が吹き出されてくるばかり。
しばらくはしのぎやすい季節とはいえ、
夏前には買い替えなければならないでしょう。
わが家の一生懸命機械たちでした。

 

・欄干を越えて初蝶谿のうへ  野衾