音楽的には

 埼玉大学の島岡教授来社。小社から『野麦峠に立つ経済学』を出している。
 新しい本の打ち合わせをした後、外で一緒に食事。いろいろお話を伺ったが、なかでも特に面白かったのは、先生が三年前からチェロの個人教授を受けているというお話。
 島岡先生から見れば息子ぐらいの年齢の師匠、島岡先生をつかまえて、まるで子供を叱るように頭ごなしに叱るそうなのだ。誉められたことはないという。あるとき、島岡先生、レッスンの復習をしていて、ははあ、師匠が以前教えてくれたのはこういうことだったのかと合点が行くことがあり、喜び勇んで次のレッスンの時にそのことを息子ぐらいの年齢の師匠に報告したそうだ。するとその息子ぐらいの若造が、もとい、師匠が、「あなたがわかったというそのことは、音楽的にはまったく無意味なことです。あなたは大学では先生かもしれないが、ことチェロに関しては赤子も同然。いい気にならないように!」島岡先生、ぐうの音も出なかったとか。
 それでも島岡先生、週一回のレッスンを欠かしたことがない。来年定年で大学を辞めるとき、最終講義で学生たちを前にピアノ伴奏付きでチェロを弾くご計画とか。がんばれ島岡先生!
 恐るべき師匠のことは島岡先生の日記にも登場する。