わたしが子どもだったころ 2

 

小学校五年六年のときの担任は小武海市蔵先生。
こぶかいいちぞうせんせー。
おおがらで、あたまが剥げていて、腹がでていて、いつもにこにこ。
きょうしつでべんきょうもしたはずなのに、
おぼえているのは、
体育館でせんせーとすもうをとり、
思いっきりぶつかっていくのに、
ぷよんぷよんのおなかが気持ちよかったこととか、
体育の時間、
グラウンドでソフトボールをしたとき、
(しょっちゅうソフトボールをしていました)
せんせーが特大のホームランを放ち、
打ったボールが体育館のいちばん上の窓ガラスを破ったことなど、
いっしょにあそんだことばかり。
べんきょうでおぼえていることといえば、
社会科の時間
だったと思いますが、
アメリカの三大自動車メーカーはなにか
という問題がだされ、
わたしはそっこう手をあげて、
まわりを見わたせば、わたしだけが手をあげていて、
せんせーにあてられ、
はい!
威勢よく呪文を唱えるように、
ゼネラルモーターズ、フォード、クライスラー。
クラスじゅうの称賛を浴びたことは言うまでもなく。
でも。
あとから思えば、
中古車とはいえ、あのころ父が初めて自家用車を購入し、
じぶんのうちにクルマが来るという信じられないことが起こり、
まえからあったクルマへの興味に火が着いたことを
せんせーはそれと知っていて、
あの問題をだしたのではなかったかと思います。
ぼんやりとですが、
そのことをせんせーにたしかめたような記憶もあり…。
そのときもたしかせんせーは
ただにこにこにこにこ。

 

・枝垂れ梅大陸からの風に酔ふ  野衾