読書の味覚

 

吉川幸次郎の大学時代の恩師が狩野直喜で、
内藤湖南・桑原隲蔵とともに京都支那学の泰斗。
狩野について吉川は、
狩野先生の教え子たちは、
先生の学問についてその理屈は把握できても、
味覚は未だしであると記している。
本を読む、
それも古典を読むのに
味覚があるというのがおもしろい。
こういう、
本読みの達人たちの文に触れると、
その静かな迫力と深さに圧倒され
個性というのがなにほどのものかと思わされてしまう。

 

・風を容れ洗濯物の秋高し  野衾