ある打ち合わせ

 

こんな夢を見た。
……
取次大手の会社役員と
今後の販売戦略について打ち合わせすることになり、
東京の本社に出向いた。
弊社からは、
わたしのほかに、
専務イシバシ、武家屋敷、それと
編集長のオカピ。
オカピが用意してきた資料を配布し、
向こうの社長を取り囲んでの
真剣な
会議らしい会議。
と、
資料に目を落としていた社長が、
「ん!?」
表情が一瞬こわばった。
社長以外のそこにいた者たちがいっせいに社長を見る。
社長の首が
120度ほどゆっくりと回転し、
部屋の隅のほうへ向かう。
そこに
しっぽまで入れると
体長3メートルはあろうかと思われる
コモドドラゴンに似た怪物がいる。
のっしのっしと辺りを睥睨するように歩いて回る。
われわれはだれひとりピクリとも動かない。
やがて怪物は、
床にぬるりとした臭い体液を残し、
部屋を出ていった。
だれからともなく、
ほーというため息が漏れた。
打ち合わせはまだ途中だったが、
怪物のせいで
変な空気が支配し、
すぐに頭が働きそうもない。
すると、
社長のすぐ横の窓から
いきなり怪物が顔を覗かせた。
舌なめずりをし、
人間のことばで、
「もう来ないよ」と。
それを合図にするかのように、
社長が自前の大きなリュックサックに資料と衣類を詰め、
山歩きの恰好に着替え、
「わたしは一足先に」
とかなんとか言って、
予定していた山登りに行くようであった。

 

・坂道を夏のかほりの深くなる  野衾