さびしさの味

 

森田正馬『神経衰弱と強迫観念の根治法』のなかに、
「赤面恐怖治癒の一例」
として二十歳の学生の話がでてきます。
治療の一環で日記を書くことになり、
それを森田に示し、
森田は必要に応じてコメントを記す。
ある日学生が、
「米をつきながら、すばらしい声で歌った。そして淋しさを消した」
と書いた。
それを読んだ森田は朱で
「わざとらしい。真面目に淋しむがよい。鮎のウルカのような味がある」
と記した。
真面目に淋しむ…
ウルカは鮎の腸、子を塩漬けにした食品。酒の肴。
うーん。
さびしさの味か。
とじぇねさの味か。

 

・グリーン車や何処へなりと夏来る  野衾