文学は

 

・水温む忙(せわ)しなき銀行員の手

 

このごろ人文系の学部への風あたりがつよく、
とくに文学部に所属する先生方は、
さぞ肩身の狭い思いをしているのではと
想像されますが、
日本のカリスマ的な精神科医である
中井久夫さんの本を読むと、
彼の人間を見るまなざしに、
文学作品がいかにかかわっているかを知り、
医療現場においても、
トータルな深い人間理解が欠かせない
ことに改めて気づかされます。
それぞれの現場で
実体験からの人間理解は
基本かもしれませんが、
古今東西の文学作品に触れていることは、
いつか補助線となって、
思わぬところで
役に立つかもしれません。
また、
役に立たなくたっていいとも思います。

 

・春泥に歩(ほ)を踏み入るる農夫かな  野衾