・秋雨と山の霊気をくぐり行く

 

子どものころから物をよく忘れました。
なかでも傘はその筆頭。
二桁ではきかないでしょう。
そのたびに自己嫌悪に陥り、
おれはダメな奴ダメな奴ダメな奴。
このごろ傘を
忘れなくなりました。
折り畳み傘を
いつもカバンに入れ
持ち歩くようになったからかも知れません。
なので今度は、
おれはいい奴いい奴。
つけまつげの娘と
きのうも坂ですれ違いました。
夢のような。

 

・秋風に毛づくろいする烏かな  野衾