二回転

 花粉症なみだなみだの競馬かな
 夜の八時に来客の予定があり、腹が減っては十分な打ち合わせができまいと考え、雨に濡れた暗い坂道を下り太宗庵へ。
 道の途中、女将さんにばったり。
「これからお店に行くところですよ」
「そうですか。どうぞどうぞ、わたしもすぐ戻りますから」
 客がちょうど途切れる時間帯なのか、お店には大将のみ。ワカメうどん大盛り餅入りをたのむ。ほどなく女将さんが帰ってきた。
 ダシの利いたうどんをいただきながら、三人、料理作りの話で盛り上がる。とくに大将の鰹ダシの話は面白かった。
 修業していたころ、なぜ厚手の鰹節を使うのかが分からなかった。薄手のものより厚手のもののほうがコクが出るとは知っているけれど、それならもっと煮出したらいいではないか。ところが、煮出したのでは、鰹の風味が主張しすぎる。厚手の鰹節を入れ、二回転したところで、さっと取り出すとちょうどよい。二回転。先人の知恵というのは、すごいものです…。
 男性客が三人入ってきた。
 勘定を済ませ、話のお土産を携え、もと来た坂道を上った。
 目と肩と硬い絆の痛さかな

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