M君
わたしもマリリン・モンローもMだが、そうではなくて…。
大学時代の友人で政府系金融機関に勤めているM君に電話。現在彼は新潟県長岡支店長だ。年賀状から、今回の地震後の対応に追われ、とても忙しくしている様子がひしひしと伝わってきたからだ。
短い時間だったが、M君の溢れる思いが電話口から聞こえてきた。なかでも、「都会で会社経営するのと地方のそれでは意味あいが違う」の言葉に、彼の万感の思いが篭められていると感じた。
M君はとにかく優秀な男で、大学卒業の時、彼から就職先を聞いて、わたしは正直なところ「なにソレ?」という感じを持った。いまなら、自分で会社を始め、M君の所属する金融機関の世話にもなっているから、自分の体験からその有難味がわかる。しかし、学生の頃、金融機関なら日本銀行じゃねーかぐらいの単純脳足りんな頭のわたしには、父親が商売をしていてその苦労を肌身で知っているM君の気概がわからなかった。
今回の天災に際しM君が、かの地の支店長であることは、いわば彼にとっての天命であったかと思うのだ。
ここに詳しく書くことは出来ないが、かつてわたしは、勤め先がらみで民間の銀行とのトラブルに巻き込まれ、困ったことがあった。その時助けてくれたのがM君だ。
彼は、わたしのために自分の勤め先を一日休んで(!)当の銀行に駆けつけてくれた。それも、肩書きなど一切言わず、わたしの友人としてそこにいることを宣言し、わたしなど見たってさっぱり解らぬ書類に目を通し、適切な処理をしてくれた。相手の銀行マンは眼を丸くしていた。問題が解決し、帰りがけ、近くのレストランに入り一緒にビールを飲んだ。
「M君、きみは学生のときから堅実だったね。学食でも、欲望に弱いぼくが合計400円を超すような小皿をトレーに並べても、きみは学生の分を守り贅沢をせず、絶対300円以上にならぬようにしていた。好きな煙草はチェリーだったね」
ニコニコ笑いながら黙ってわたしの話を聞いていたM君が、言下に、
「ぼくが本当に堅実なら、君とは付き合っていないよ」
確かに。仰る通り。あはははは…(涙)
春風社立ち上げの時からしばらく会社のいろいろな数字もM君に診てもらった。
ある時、秋田に帰ったら、M君から父宛てに手紙が届いていたことを知らされた。大事にしまっておいた手紙を父に見せられ、涙が溢れた。会社を立ち上げた息子を心配しているだろうとの配慮から、わたしに内緒で父に手紙を書いてくれていた。有難かった。
「桜木町に移ってからまだ一度も訪ねていないので、今年は必ず寄らせてもらうよ。電話ありがとう」
健康にくれぐれも留意するように伝え、電話を切った。
いいお話をありがとうございました。
立派なエッセイ文学になっていますね。
三浦さんの書き方も上手いです。
今年もよもやま日記を楽しませてもらいます。
>seikiさん
お褒めいただき、ありがとうございます。
怒涛の(こればっか)2005年も書きつづけていく所存。
今年もどうぞよろしく!